クーリーフ治療の適応チェックリスト:あなたの膝の痛みは対象?手術が難しい方、高齢の方へ

2025/12/01

変形性膝関節症による慢性的な膝の痛みは、単なる不快感にとどまらず、活動意欲の低下、筋力衰退、最終的には転倒や寝たきりのリスクを高めます。「手術は最後の手段にしたい」「持病や年齢で手術は諦めている」とお考えの方にとって、クーリーフ(Coolief)治療は非常に現実的で、有効性の高い第三の選択肢となります。

しかし、クーリーフは魔法の杖ではありません。この治療は、特定の神経が痛みの原因となっている場合に最大の効果を発揮します。そのため、正確な適応判断が成功の鍵を握ります。

本記事では、日本関節病学会によるクーリーフ認定を受けた、日本整形外科学会専門医の院長が、クーリーフ治療の適応となるかをご自身で確認できる詳細なチェックリストをご紹介します。特に高齢の方や合併症で手術が難しい方が、この治療を検討すべき医学的・生活上の理由についても徹底的に解説します。

1. なぜクーリーフは「手術回避の選択肢」として注目されるのか?

変形性膝関節症の治療は、一般的に保存療法(薬、注射、リハビリ)から始まり、効果がなければ手術療法(人工関節置換術など)へと進みます。しかし、クーリーフ治療は、この両者のギャップを埋める画期的な存在です。

1-1. 治療のターゲットと効果の特徴

クーリーフ(末梢神経ラジオ波焼灼療法)は、膝の痛みの信号を脳に伝える感覚神経のみをターゲットとし、高周波(ラジオ波)でその伝達機能を長期間ブロックします。

  • 低侵襲性: メスを使わず、特殊な針を刺すだけで治療が完了するため、体力の消耗や術後の回復期間が大幅に短縮されます。
  • 長期効果: 臨床データに基づき、一度の治療で約1年~2年にわたり痛みの軽減が持続することが期待されています。
  • 機能維持: 筋肉を動かす運動神経は避けるため、膝の曲げ伸ばしなどの運動機能には影響を与えません。

1-2. 治療の目的は「痛みのない活動期間」の創出

クーリーフの真の価値は、単に痛みを止めることではなく、痛みに邪魔されない活動的な期間を創出することにあります。この期間中に、当院が専門とする運動器リハビリテーションを集中して行うことで、膝周辺の筋力を回復させ、痛みの再発予防と機能改善を図ることが、治療の最終目標となります。

2. クーリーフ治療の適応チェックリスト:あなたの痛みの「タイプ」を診断

クーリーフ治療が最も効果を発揮するのは、痛みの原因が明確に末梢の感覚神経にある場合です。以下のチェックリストで、ご自身の痛みの性質を確認してみましょう。

📌 クーリーフ治療の適応チェックリスト(18項目)

項目質問内容はい/いいえ
A. 痛みの性質と持続期間
1. 膝の痛みが6ヶ月以上続いており、慢性的な状態である。
2. 痛みは主に膝関節の内部や表面の広範囲にあり、ピンポイントではない。
3. 痛みはズキズキ、ジンジン、ピリピリとした感覚を伴うことがある。
4. 膝の裏側(ハムストリング付近)や、太ももの内側など、関節の周りにまで痛みを感じる。
B. 日常生活における誘発要因
5. 階段の上り下りや、立ち上がりなど、動作の開始時に特に痛みが強い。
6. 長時間立っているときや、歩きすぎた後に痛みが激しくなる。
7. 痛みが強いため、夜間に目が覚めることがある(夜間痛)。
8. 朝起きてしばらくの間、膝の関節がこわばる感覚がある(朝のこわばり)。
C. 既存治療の効果
9. 過去にヒアルロン酸注射ステロイド注射を受けたが、数週間で効果が薄れてしまった。
10. 痛み止め(内服薬や湿布)を常用しているが、痛みを完全に抑えられない
11. 理学療法士によるリハビリを継続したが、痛みが邪魔をして十分な筋力強化ができなかった。
D. 手術・体力の制限
12. 糖尿病、心臓病、肺疾患などの持病があり、全身麻酔を伴う手術が高リスクと指摘されている。
13. ご高齢(75歳以上)のため、体力的に手術後の長期間の入院や集中的なリハビリが難しいと感じる。
14. 仕事や家族の介護などで、手術のために数週間〜数ヶ月の時間を確保することが困難である。
15. 人工関節置換術を勧められているが、できる限り自分の関節を残したいという希望が強い。
E. 医師への要望
16. 痛みの原因を超音波(エコー)などの画像検査で明確に特定してほしい。
17. 治療後に痛みがなくなった状態で、専門的な運動器リハビリを受けたい。
18. 痛みがなくなれば、趣味や旅行に積極的に出かけたい。

診断の目安と専門医への相談のタイミング

  • 「はい」が6つ以上: クーリーフ治療の適応となる可能性が非常に高いです。特に項目 A・B・C に多く該当する場合、痛みの原因がクーリーフの得意とする神経に集中している可能性が高いです。
  • 「はい」が10個以上: 従来の治療では解決が難しく、クーリーフ治療が生活を一変させる大きなカギとなる可能性があります。特に項目 D に該当し、手術が難しい方は、ぜひ日本関節病学会クーリーフ認定医にご相談ください。

3. 手術を避けたい方のためのクーリーフ治療の医学的優位性

クーリーフ治療は、なぜ手術が難しい方や高齢の方にとって理想的なのか、その医学的な優位性を解説します。

3-1. 医師の「認定資格」が保証する高水準の安全性と有効性

クーリーフ治療は高度な技術と正確な診断を要するため、治療を行う医師の資格と経験が重要になります。

  • 日本関節病学会 クーリーフ認定医: 当院の院長は、日本関節病学会による厳しい審査とトレーニングをクリアし、クーリーフ認定を受けています。これは、クーリーフシステムの原理、適応、安全な手技に関する深い知識と技術を持つことが学会によって正式に認められた証です。
  • 高水準の安全性: 認定医が治療を行うことで、神経の正確な特定、運動神経の確実な回避、合併症リスクの低減が実現され、高水準の安全性が保証されます。
  • 正確な診断: 認定医は治療前のテストブロックの実施においても高い精度を求められます。これは、患者さまにとって「効果の見込める方だけに治療を行う」という倫理的な保証にもつながります。

3-2. 合併症リスクの回避:局所麻酔で完了する低侵襲性

人工関節置換術は最終的に優れた結果をもたらしますが、全身麻酔や硬膜外麻酔が必要であり、以下のようなリスクを伴います。

  • 循環器系への負担: 全身麻酔は心臓や肺に大きな負担をかけます。心臓疾患(狭心症、心筋梗塞の既往)や重度の呼吸器疾患を持つ高齢者にとって、これは深刻なリスクです。
  • 感染症のリスク: 人工関節手術では、人工物特有の感染症リスクが伴います。
  • 出血リスク: 大量の出血や輸血が必要になる可能性があります。

これに対し、クーリーフは局所麻酔のみで、メスを使わずに日帰りで行えるため、これらのリスクをほぼ回避できます。

3-3. 治療後の生活とリハビリへの即時移行

手術後の回復には、切開した組織の治癒や、感染症予防のための厳重な管理が必要です。しかしクーリーフ治療は侵襲が少ないため、治療後すぐにリハビリテーションを開始できます。

  • 早期のリハビリ開始: 痛みが軽減した状態ですぐにリハビリを開始できるため、筋力低下の進行を防ぎ、早期に機能回復を図れます。
  • 日本リハビリテーション医学会専門医の強み: 院長はリハビリの専門家でもあるため、痛みをブロックした後の「体をどう動かし、どう機能を回復させるか」というリハビリテーション医学の専門的な視点を治療計画に組み込んでいます。これは、単なる疼痛治療にとどまらず、「地域の寝たきりゼロ」という当院のミッションを実現するための重要な要素です。

4. 治療の正確性を保証する:認定医による「テストブロック」詳細解説

クーリーフ治療の成功は、高性能な機器だけでなく、「痛みの原因神経を正確に特定する」医師の診断能力に依存します。

4-1. なぜ「テストブロック」が不可欠なのか?

膝関節周辺には複数の神経が走行しており、レントゲンやMRIではどの神経が痛みを伝えているかを特定できません。テストブロックは、その神経を特定するための唯一無二の診断ツールです。

テストブロックのステップ目的と効果
ステップ1:高精度な神経の描出超音波(エコー)を用いて、治療のターゲットとなる感覚神経をリアルタイムで描出し、針の侵入経路を正確に計画します。
ステップ2:局所麻酔薬の注入描出された神経のごく近くに、ごく少量の局所麻酔薬を注入します。この麻酔薬は15分程度で効果が切れます。
ステップ3:効果の判定注射直後、患者さんに膝を動かしてもらい、痛みが半減以上軽減するかを評価します。痛みが軽減した場合、その神経こそが慢性疼痛の原因であると断定します。

4-2. 認定医による「超音波エコーガイド下」診断の優位性

当院の院長は、日本関節病学会によるクーリーフ認定を受けているため、その診断技術は学会のお墨付きです。

  • 高い成功率: 経験豊富な認定医がエコーガイド下で行うことで、神経を外すことなくピンポイントで麻酔薬を注入でき、治療の成功率を最大化します。
  • 安全性の確保: 血管や重要な組織を避けながら針を進めることができるため、合併症のリスクを極限まで抑えます。

「テストブロックで十分な鎮痛が得られた方は、本治療(CRFA)でも高い確率で効果が持続することが報告されています。そのため、効果予測の精度を高める目的でテストブロックを行います。」

5. 最後に:専門医とともに活動的な未来を

変形性膝関節症の痛みは我慢するものではありません。特に、高齢や持病を理由に手術を断念されていた方にとって、クーリーフ治療は生活の質を劇的に向上させる可能性を秘めています。

だて整形外科リハビリテーションクリニックは、下関市初導入のクーリーフ治療を、日本関節病学会クーリーフ認定医である院長が提供することで、診断から治療、そして機能回復まで、最高水準のケアをお約束します。

「クーリーフは自分に合っているのか」「痛みの原因はどこにあるのか」など、膝の痛みに関するあらゆるご相談を承ります。チェックリストに多く該当された方は、ぜひ一度、当院にご相談ください。

記事監修

伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)

福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医日本骨粗鬆症学会専門医日本リハビリテーション医学会専門医など多岐にわたる専門医資格を保持。日本関節病学会によるクーリーフ認定を受け、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。

【出典・参考文献】

本記事は、公的機関の発表、および国内外の信頼できる臨床報告に基づき作成されています。

  1. 公的医療制度情報
    • 厚生労働省:令和4年度診療報酬改定の概要(末梢神経ラジオ波焼灼療法の保険適用に関する情報)
  2. 医療機器に関する情報
    • アバノス・メディカル・ジャパン株式会社:Coolief疼痛管理用高周波システムに関する医療従事者向け添付文書及び製品情報
      • (製品の仕組み、冷却ラジオ波(Cooled RF)技術、安全性、運動神経回避に関する情報)
  3. 専門医学会情報
    • 日本関節病学会:クーリーフ認定制度に関する情報
    • 日本整形外科学会:変形性膝関節症診療ガイドライン
    • 日本リハビリテーション医学会:疼痛管理に関する見解とリハビリテーションの重要性
    • 各医学誌に掲載された末梢神経ラジオ波焼灼療法に関する臨床研究論文