だて整形外科リハビリテーションクリニック

骨粗しょう症ってなんだろう?若いうちから知っておきたい骨の秘密

2025/07/01

本記事は、帝人ファーマ社内講演会(2025.6.18)にて講師として登壇した内容をもとに、高校生向けにわかりやすく再構成した全4回シリーズの第1回です。医療やからだについて学ぶきっかけとして、ぜひご活用ください。

はじめに:骨粗しょう症は、お年寄りだけの病気じゃない?

「骨粗しょう症(こつそしょうしょう)」という言葉、みんなは聞いたことがあるかな?もしかしたら、「おばあちゃんやおじいちゃんがなる病気でしょ?」って思っている人もいるかもしれませんね。確かに、年齢を重ねると骨が弱くなりやすいのは事実です。でも実は、若い頃からの骨の健康が、将来の骨粗しょう症のリスクを大きく左右するんですよ。つまり、高校生のみなさんにとっても、骨粗しょう症は決して他人事ではない、とっても大切なテーマなんです!

今回は、下関にある整形外科クリニック「だて整形外科リハビリテーションクリニック」が、この骨粗しょう症について、みなさんにも分かりやすく、そして面白く解説していきます。骨の健康について一緒に学び、元気な毎日を送るための第一歩を踏み出しましょう!

骨粗しょう症ってどんな病気?骨がスカスカになるってどういうこと?

骨粗しょう症を簡単に言うと、「骨がもろくなって、骨折しやすくなる病気」です。私たちの体の中にある骨は、実は毎日少しずつ古い骨が壊され、新しい骨が作られるという「骨の新陳代謝(リモデリング)」を繰り返しています。このバランスが崩れて、骨が壊れるスピードが速くなったり、新しい骨を作るスピードが遅くなったりすると、骨の中がスカスカになってしまうんです。例えるなら、丈夫な柱の間にたくさんあったはずの小さな穴がどんどん大きくなって、柱自体が弱くなってしまうようなイメージですね。

骨がスカスカになると、普段なら何ともないような、

ちょっとした衝撃でも骨折してしまうことがあります。例えば、

  • 家の中でつまずいて転んだだけ
  • くしゃみをしただけ
  • 重いものを持ち上げただけ

こんなささいなことで骨折してしまうのが、骨粗しょう症の怖いところなんです。

骨粗しょう症になると、どんな骨折が起こりやすいの?

骨粗しょう症による骨折で特に多いのが、次の3つの場所です。

  1. 太もものつけ根(大腿骨近位部)の骨折
    • これは股関節の近くの骨で、ここを骨折すると、自分で歩くことが難しくなることが多いです。
    • 多くの場合、手術が必要になります。
    • この骨折がきっかけで、寝たきりになったり、介護が必要になったりする人も多くいる、とても深刻な骨折です。実際に、日本では3分に1人がこの大腿骨近位部骨折を起こしているとされています。平均年齢は83.3歳ですが、この骨折により40%の人が以前のように歩けなくなり、1年後の死亡率も10.1%と決して低くありません。さらに、骨折が原因で介護が必要になった場合の5年間の費用は、約1540万円にもなると言われています。
  2. 背骨(脊椎)の骨折
    • これは「いつのまにか骨折」とも言われることがあります。なぜなら、転んだり強い衝撃を受けたりしなくても、背骨が体の重みに耐えきれずに潰れてしまうことがあるからです。
    • 痛みを感じないこともありますが、背中が丸くなったり、身長が縮んだりする原因になります。
  3. 手首(橈骨遠位端)の骨折
    • これは、転んで手をついたときに起こりやすい骨折です。
    • 比較的若い世代でも起こることがありますが、骨粗しょう症の初期サインとして現れることもあります。

これらの骨折は、私たちの生活の質(QOL)を大きく低下させてしまうだけでなく、医療費や介護費用の負担も大きくなる可能性があります。だからこそ、骨粗しょう症を予防し、早期に治療することが非常に大切なのです。

若い頃からの骨の健康が大切な理由

「私はまだ若いから大丈夫!」と思っている高校生のみなさん。実は、人間の骨量は、20歳くらいまでにピークを迎え、その後は徐々に減っていくことが分かっています。つまり、若い頃にどれだけしっかり骨を作っておくかが、将来の骨の健康を左右するんです。

若い頃に骨量を十分に増やしておかないと、歳をとってから骨が減り始めたときに、骨粗しょう症になりやすくなってしまいます。骨を強くするには、今が一番大切な時期です!牛乳や小魚、納豆などカルシウムを多く含む食品をしっかり食べましょう。運動では、ジャンプや走るなど骨に刺激を与える動きが効果的です。睡眠も骨の成長に欠かせないので、夜更かしは控えて7〜8時間は眠る習慣を。タバコやお酒は骨の成長を妨げます。今の選択が将来の健康な体をつくります。骨のために、今日からできることを始めましょう。

自分の骨の強さを知るには?だて整形外科の骨密度検査

だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、みなさんの骨の健康状態を詳しく知るために、「骨密度検査」を行っています。

特に、

50歳以上の女性を中心に、次の3つの場所の骨の強さを調べています

  • 腰の骨(腰椎)
  • 左右の足のつけ根の骨(大腿骨)

この3つの場所のうち、

1つでも骨の強さを示す「骨密度」が「70%以下」だったら、骨粗しょう症と診断しています 13

驚きの検査結果!多くの人が知らないうちに骨が弱っている?

当院で実際に骨密度検査を受けた3216人の女性のうち、

なんと2386人(74.2%)が骨粗しょう症と診断されました。この数字を見てどう感じますか?これはつまり、

多くの人が自分では気づかないうちに、骨が弱くなっているという現状を示しています。

若いみなさんにとってはまだピンとこないかもしれませんが、将来の自分のためにも、骨の健康に関心を持つことがとても重要です。

骨粗しょう症と診断されたら?だて整形外科の治療と予防

だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、骨粗しょう症と診断された方や、骨が弱くなり始めている方に対して、骨を強くするための様々な取り組みを行っています。

  • お薬による治療: 骨を強くするためのお薬には、いくつかの種類があります。次の回で詳しく説明しますが、骨の破壊を抑える薬や、骨を作る力を助ける薬などがあります 16
  • リハビリテーション: 骨折しにくい体を作るためには、骨だけでなく筋肉も大切です。転びにくい体を作るための運動や、バランス能力を高めるリハビリテーションを行っています。

薬による治療とリハビリテーション、そして日々の運動や栄養のバランスを整えること、これらを組み合わせることで、骨を強くし、元気で活動的な毎日を長く続けられるようにサポートしています。

まとめと次回予告

今回は、骨粗しょう症がどんな病気なのか、そしてなぜ若い頃からの骨の健康が大切なのかについてお話ししました。骨粗しょう症は、放置すると深刻な骨折につながり、私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。しかし、早期に発見し、適切な治療と予防を行うことで、そのリスクを大きく減らすことができます。

だて整形外科リハビリテーションクリニックは、下関で地域のみなさんの骨の健康をサポートしています。もし、骨の健康について少しでも気になることがあれば、いつでもご相談ください。

次回は、「どんな人が骨折しやすいの?骨を守るために知っておこう」というテーマで、骨折のリスクファクターや、それを防ぐための具体的な方法について、もっと詳しく解説していきます。お楽しみに!

監修者情報

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。