関節リウマチは、手指や足の小さな関節から始まり、徐々に全身に広がっていく自己免疫疾患です。初期段階では「朝のこわばり」や「軽い腫れ」といった症状が中心で、加齢や疲労と勘違いされることも少なくありません。
しかし、初期の段階に適切な治療を受けられるかどうかが、その後の生活の質を大きく左右します。関節が破壊されてしまうと元に戻すことは難しく、早期発見と治療開始がとても重要になります。リウマチを治療せずに放置すると関節の変形や動作制限だけでなく、全身に影響を及ぼす合併症のリスクも高まります。
本記事では、「リウマチの症状」や「炎症を放置した場合のリスク」について解説します。
リウマチとは?
関節リウマチは、体の免疫システムが誤って自分自身の組織を攻撃することによって起こる慢性的な炎症性疾患です。本来であれば外敵から身を守るはずの免疫が関節の滑膜に反応し、炎症を繰り返すことで徐々に関節の組織を破壊していきます。特に手指や手首、足の小さな関節に起こりやすく、左右対称に症状が出やすいことが特徴です。長期間にわたり炎症が続くと、軟骨や骨が侵食され、関節の変形や可動域の制限につながります。
リウマチの原因は一つに断定されていませんが、遺伝と環境が関与していると考えられており、喫煙や過度のストレスなども発症リスクを高めるといわれています。特に30〜50代の女性に多く見られるのが特徴で、男女比では女性が男性の3〜4倍にのぼります。家族にリウマチを持つ人がいる場合も発症の確率が高まるとされ、日常生活の中での体調変化に気を配ることが大切です。
リウマチの初期症状
リウマチの初期症状は、一見すると疲労や加齢による関節の違和感と混同されやすいことが少なくありません。代表的なサインとしては、朝起きたときに手や指がこわばる「朝のこわばり」があります。これは数分で解消することもありますが、症状が30分以上続く場合はリウマチの可能性が高いため注意が必要です。手指の動きが重く感じられ、ボタンを留める、ペンを持つといった日常動作がしにくくなるケースも見られます。
また、関節の腫れや痛みが特徴的で、押すと圧痛を感じたり、関節部分が熱を持ったように感じられることもあります。リウマチの炎症は一時的に治まることもありますが、放置すると徐々に悪化していく傾向があります。初期段階では手足の小さな関節に限られることが多いものの、進行すると膝や肘、肩といった大きな関節にも広がります。変化を早期に気づき、専門医に相談することが重症化を防ぐうえで非常に大切です。
リウマチの進行によって現れる体の変化
関節リウマチは放置すると徐々に炎症が広がり、体にさまざまな変化が現れます。初期段階では手指や足の関節に限られていた腫れや痛みが、進行するにつれて膝や股関節など大きな関節に及び、歩行や立ち上がりといった基本動作に支障をきたすようになります。炎症が慢性化すると関節の骨や軟骨が破壊され、変形が起こるのも特徴です。
また、リウマチの炎症は全身性の疾患として知られており、倦怠感や微熱、食欲低下など、全身症状が伴う場合があります。これらは一見すると風邪や疲労のように感じられることも多く、気づかぬうちに病気が進んでしまうことも少なくありません。放置期間が長くなるほど関節破壊のリスクが高まり、日常生活の質に大きく影響します。
リウマチを放置すると起こる関節のダメージ
リウマチを放置すると、関節内部で炎症が持続し、軟骨や骨を破壊するプロセスが進んでいきます。この破壊は不可逆的であり、一度変形してしまった関節を元に戻すことは難しいとされています。手指が曲がったまま動かなくなったり、膝関節の変形によって歩行困難に陥ったりするケースもあります。
さらに進行すると、関節が固まる「関節強直」が起こり、自由な動作が制限されるようになります。身体機能の低下は介助を必要とする生活につながり、本人だけでなく家族の生活にも影響を及ぼします。早期治療によって炎症を抑え込むことができれば、このような不可逆的な関節破壊を防げる可能性が高いため、初期段階での受診が極めて重要となります。
リウマチと日常生活の関係
リウマチが進行すると、単に関節の痛みや変形にとどまらず、日常生活全般に影響を与えます。例えば、手のこわばりで調理や洗濯といった家事が難しくなったり、足や膝の痛みによって外出や仕事に支障をきたしたりします。社会生活における制限が増えると、精神的なストレスや不安も高まり、うつ状態に陥ることもあります。
また、慢性的な炎症によって体力が奪われ、疲労感が強くなるケースも多く報告されています。以前は当たり前にできていた行動が制限されることは、自己効力感を下げ、生活の質を大きく低下させます。
リウマチの合併症とは?
関節リウマチは関節の病気というイメージが強いですが、実際には全身に影響を及ぼす可能性がある全身性疾患です。慢性的な炎症は血管や内臓にも波及し、合併症を引き起こすことがあります。
代表的なものに「間質性肺炎」があり、咳や息切れが続くケースでは注意が必要です。また、血管に炎症が及ぶと「動脈硬化」が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患のリスクを高めることも知られています。
さらに、リウマチ患者では骨の新陳代謝が乱れやすく「骨粗しょう症」を合併することが少なくありません。関節の変形や筋力低下と重なれば、転倒や骨折の危険性も増します。また、長期的に服用する薬の影響で感染症にかかりやすくなることもあり、日常の体調管理が欠かせません。関節だけにとどまらない全身へのリスクを理解し、合併症を予防するためにも定期的な医師のフォローが必要です。
まとめ
リウマチは単なる関節の病気ではなく、全身に影響を及ぼす可能性を持つ慢性疾患です。少しでも疑わしい症状を感じたときは、早めに整形外科やリウマチ専門医を受診し、正しい診断と治療を受けることが大切です。