クーリーフ治療の効果と持続期間:臨床データと期待される生活の変化

2025/11/10

「クーリーフ(Coolief)治療で、本当に膝の痛みは楽になるの?」「その効果はどれくらい続くのだろう?」

新しい治療法であるクーリーフについて、その効果や持続期間は多くの方が最も気にされる点です。従来の治療法で満足な効果が得られなかった方、手術に抵抗がある方にとって、クーリーフは希望の光となり得ます。

本記事では、整形外科専門医である当院の知見に基づき、クーリーフ治療がもたらす疼痛軽減の具体的な効果持続期間について、信頼性の高い臨床データに基づき深く解説します。さらに、痛みが軽減した後に、当院の専門的なリハビリがどのようにあなたの活動的な生活を取り戻すかについても詳述します。

1. クーリーフ治療の作用機序の深掘り:長期効果の科学的根拠

クーリーフ治療の最大の強みである長期的な効果は、その画期的な治療メカニズムにあります。単なる一時的なブロック注射とは一線を画す、冷却ラジオ波(Cooled RF)技術を詳しく見ていきましょう。

1-1. 痛みの「発信源」ではなく「伝達路」を狙う

変形性膝関節症による慢性的な痛みは、関節内の炎症によって生じますが、実際に「痛い」と感じるのは、その信号を脳に伝達する感覚神経(知覚神経)が働いているからです。

クーリーフ治療は、この炎症そのものを直接治すのではなく、痛みの信号が通る伝達路(末梢神経)を高精度で遮断することを目指します。これにより、痛みの信号が脳に届かなくなり、結果として痛みが軽減します。

1-2. 冷却ラジオ波(Cooled RF)技術の優位性

クーリーフシステムは、一般的なラジオ波治療とは異なり、針の先端を持続的に冷却しながら高周波エネルギーを放出します。

  • 焼灼範囲の拡大: 冷却することで、針の先端付近の組織温度が過度に上昇するのを防ぎつつ、より多くの熱エネルギーを広範囲に拡散させることができます。これにより、ターゲットとする神経をより大きく、確実な範囲で焼灼することが可能になります。
  • 周辺組織の保護: 周囲の皮膚や筋肉組織が高温になりすぎるのを防ぐため、やけどのリスクが低減し、安全性が高まります。特に、運動機能を司る運動神経を避けながら、痛みの神経(感覚神経)のみに効果的に作用させることが可能です。

この冷却ラジオ波技術による神経の「熱凝固」こそが、痛みの信号伝達を約1年~2年という長期間にわたってブロックし続ける科学的根拠です。

2. 臨床データが証明するクーリーフ治療の具体的な効果

クーリーフの有効性は、国際的に権威ある医学誌に掲載された臨床試験によって裏付けられています。特に痛みの強さを評価するVASスコアWOMACスコア(膝の機能評価)において、顕著な改善が見られます。

2-1. 痛みの劇的な軽減:慢性疼痛からの解放

前述の通り、海外の主要な臨床試験では、治療後6ヶ月の時点で約74.1%の患者さんが、治療前と比較して痛みの程度が50%以上軽減したと報告されています。

この「痛みが半減する」という効果は、日常生活を大きく変えるレベルです。日常生活動作において、痛みのために諦めていた動作や活動に再び取り組むための大きなエネルギーとなります。

評価時点50%以上の疼痛軽減効果を維持した患者の割合従来のステロイド注射との比較
治療後6ヶ月約74.1%従来の注射群より有意に高い効果
治療後1年約65%多くの患者で効果が長期に持続

2-2. 効果の持続期間と再治療の可能性

クーリーフは、一度治療を行えば、その効果が最短11ヶ月から最長2年にわたって持続することが期待されます。

  • 神経の再生サイクル: 焼灼された感覚神経は時間をかけてゆっくりと再生しますが、この再生するまでの間、患者さまは痛みから解放されます。神経が再生し、再び痛みを感じ始めるまでの期間が、そのまま治療効果の持続期間となります。
  • 再治療への適用: 効果の持続期間が終了し、再び痛みが強くなった場合でも、約1年以上の間隔を空けることで2回目の治療を受けることが可能です。これにより、手術をせずに長期間にわたって痛みをコントロールしていくことが現実的な選択肢となります。

3. 痛みが軽減した後の「生活の変革」とリハビリの重要性

クーリーフ治療の最も重要な目的は、痛みをなくすことではなく、痛みを気にせず動ける体を取り戻すことです。当院では、この治療を「リハビリテーションを成功させるための準備段階」と位置づけています。

3-1. QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)の劇的改善

痛みが軽減すると、患者さんの生活の質は劇的に改善します。

  • 活動的な自由の回復:
    • 痛みで敬遠していた旅行や趣味(ガーデニング、ゴルフなど)に再び挑戦できるようになります。
    • 長時間の買い物や散歩が可能になり、社会参加の機会が増えます。
  • 自宅内での安心感の向上:
    • 階段の上り下り、浴槽をまたぐ、床から立ち上がるなどの日常的な動作が楽になり、自立した生活を維持できます。
    • 夜間痛の軽減は、質の高い睡眠を保証し、精神的な安定にもつながります。

3-2. 専門医が推奨するリハビリテーションの相乗効果

クーリーフ治療は変形を治すものではないからこそ、治療後のリハビリが非常に重要です。当院は、日本リハビリテーション医学会専門医の資格を持つ院長を中心に、充実したリハビリ体制を備えています。

  1. 痛みの悪循環からの脱却: 慢性的な痛みは「動かさない→筋力低下→さらに痛む」という悪循環を生みます。クーリーフは、この悪循環の鎖を断ち切ります。
  2. 筋力回復と機能改善: 痛みがなくなった状態で行うリハビリは、効率が格段に向上します。弱った太ももの筋肉(大腿四頭筋)や体幹の筋肉を専門的に鍛え直すことで、関節への負担を減らし、膝の機能そのものを高めます。
  3. 転倒・寝たきり予防: 膝の機能とバランス感覚が改善することで、高齢者の大きなリスクである転倒を予防します。これは、当院のミッションである「地域の寝たきりゼロ」の達成に不可欠なステップです。

4. 最後に:専門医にご相談ください

クーリーフ治療は、変形性膝関節症による慢性疼痛でお悩みの方にとって、手術を避けながら活動的な毎日を取り戻すための、強力かつエビデンスに基づいた選択肢となり得ます。

下関市初導入のクーリーフ治療と、専門医による運動器リハビリという両輪で、患者さま一人ひとりの「歩く喜び」を全力でサポートいたします。効果や適応について詳しく知りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。

記事監修

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)

福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医日本骨粗鬆症学会専門医日本リハビリテーション医学会専門医など多岐にわたる専門医資格を保持。地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。

【出典・参考文献】

本記事は、公的機関の発表、および国内外の信頼できる臨床報告に基づき作成されています。

  1. 公的医療制度情報
    • 厚生労働省:令和4年度診療報酬改定の概要(個別改定項目について)
      • (末梢神経ラジオ波焼灼療法(Coolief)の保険適用(Kコード)に関する情報)
  2. 医療機器に関する情報
    • アバノス・メディカル・ジャパン株式会社:Coolief疼痛管理用高周波システムに関する医療従事者向け添付文書及び製品情報
      • (製品の仕組み、冷却ラジオ波(Cooled RF)技術、作用メカニズム、運動神経回避の安全性に関する情報)
  3. 主要な臨床データ・有効性に関する情報
    • Corey, A. S., et al.:Prospective, Randomized, Multi-Center Study Evaluating the Efficacy and Safety of Cooled Radiofrequency Denervation for the Treatment of Chronic Knee Pain. Pain Pract. 2017 Jul;17(6):687-698.
      • (クーリーフ治療における疼痛軽減の臨床的有効性、持続期間(最大2年間)、痛みのVASスコアおよび膝機能のWOMACスコア改善データに関する情報。記事中の「痛みが半減」の根拠。)
  4. 専門医学会情報
    • 日本整形外科学会:変形性膝関節症診療ガイドライン
    • 日本リハビリテーション医学会:変形性膝関節症のリハビリテーションに関する見解
      • (変形性膝関節症の診断基準、治療アルゴリズム、および疼痛軽減後のリハビリテーションの医学的根拠に関する情報)