本記事は、帝人ファーマ社内講演会(2025.6.18)にて講師として登壇した内容をもとに、高校生向けにわかりやすく再構成した全4回シリーズの第2回です。医療やからだについて学ぶきっかけとして、ぜひご活用ください。
こんにちは!下関の整形外科、だて整形外科リハビリテーションクリニックです 。前回は、骨粗しょう症という病気がどんなものか、そして若い頃からの骨の健康がどれほど大切かをお話ししましたね。今回は、「どんな人が骨折しやすいのか?」、そして「どうすれば骨折を防げるのか?」について、もっと具体的に、分かりやすくお話ししていきます 。
「まさか自分が骨折するなんて!」と思っている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折は、意外なほど身近に潜んでいる危険なんです。自分の骨を守るために、ぜひ今日のブログを読んで、知識を深めていきましょう!
骨粗しょう症が原因で骨折しやすい人には、いくつかの特徴があります。特に注意してほしいのは、次のポイントです。
1. すでに骨折したことがある人
「一度骨折したことがあるから、もう大丈夫」と思っていませんか?実はその逆なんです。
すでに骨折したことがある人は、また骨折しやすくなるというデータがあります 。特に、以下の部位を骨折した経験がある方は、その後の骨折リスクが数倍も高まることが分かっています 。
だからこそ、
最初の骨折が起こった後には、すぐにしっかりとした治療を始めることが大切なんです 。
2. 「ラッキーブレーク」を知っていますか?
「ラッキーブレーク」とは、実は「幸運な骨折」という意味なんです 。ちょっとびっくりする言葉ですが、これは、
骨粗しょう症だと気づくきっかけになる骨折のことを指します 。例えば、転んで手をついたときに手首を骨折したり、気づかないうちに背骨が潰れてしまったりするケースがあります。
手首の骨折は、脆弱性骨折(わずかな外力で起こる骨折)の初発として多く見られ 、その後の脆弱性骨折の発生リスクを2.4倍に高めることが報告されています 。大切なのは、この「最初の骨折」を「最後の骨折」にするという考え方です 。国際骨粗鬆症財団も「STOP AT ONE」(最初の骨折を最後にしよう)というスローガンを掲げています 。最初の骨折を早期に発見し、適切な治療を始めることで、その後の骨折の「ドミノ倒し」を防ぐことができるんですよ 。
3. 年齢が高くなるとリスクも上がる
骨折の頻度は、年齢とともに増加していくことが分かっています 。特に、50代ではまだ少ないものの、
60代から骨折の頻度が増え始めます 。そして、70代、80代とさらに高くなる傾向があります 。
だからこそ、当院では50歳、60歳といった節目での骨密度検査と、必要に応じた治療介入の重要性を強くお伝えしています 。
自分の骨の強さを知るために最も確実なのが、骨密度検査です。だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、骨粗しょう症の診断と治療のために、特に次の3つの部位の骨密度を測定しています。
なぜ左右両方の足のつけ根の骨を測るのか、疑問に思うかもしれませんね。実は、ここに大切な理由があるんです 。
通常、大腿骨の骨密度測定は片側のみで行われることが多いのですが、
左右のどちらか一方が正常な骨密度であっても、反対側の骨密度が低下しているケースがあるからです 。
当院の検査データを見ると、65歳以上の男性と50歳以上の女性、合計4076人のうち腰椎と片側の大腿骨は正常範囲なのに、反対側の大腿骨の骨密度が70%以下だったという方が、なんと14.2%(581人)もいたんです 。
もし片側しか測定していなかったら、これらの患者さんは骨粗しょう症の診断や治療の機会を失ってしまっていた可能性があります 。だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、このような「見逃し」を防ぎ、一人ひとりの患者さんに最適な治療を提供するために、
両側の大腿骨の骨密度を丁寧に測定することにこだわっています 。これは、骨折リスクの高い部位である大腿骨の骨密度が、骨折リスクの低減を反映するという研究結果にも基づいています 。
骨粗しょう症の治療は、ただ薬を飲むだけではありません。だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、一人ひとりの患者さんに合わせた総合的なアプローチで、骨の健康をサポートしています 。
これらの治療や予防策を続けることで、骨を強くし、元気で活動的な毎日を長く送ることができるようになります。
今回は、骨粗しょう症で骨折しやすい人の特徴や、骨密度検査の重要性についてお話ししました。特に、一度骨折した経験がある方や、年齢を重ねてきた方は、自身の骨の健康に注意を払う必要があります。
だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、患者さん一人ひとりの骨の状態を丁寧に診断し、それぞれに合ったお薬の選択やリハビリのサポートを通じて、「寝たきりゼロ」を目指しています 。
自分の体に関心を持ち、早めに骨の健康チェックをすること。それが、将来の骨折を防ぎ、健康で豊かな生活を送るための第一歩になります。
もし、骨の健康について少しでも気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。私たちと一緒に、大切な骨を守っていきましょう!
次回は、骨を強くするためのお薬について、それぞれの種類や特徴をさらに詳しく解説していきます。お楽しみに!
日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。