本記事は、帝人ファーマ社内講演会(2025.6.18)にて講師として登壇した内容をもとに、高校生向けにわかりやすく再構成した全4回シリーズの第3回です。医療やからだについて学ぶきっかけとして、ぜひご活用ください。
こんにちは!下関の整形外科、「だて整形外科リハビリテーションクリニック」です。これまでのブログで、骨粗しょう症とはどんな病気か、そしてどんな人が骨折しやすいかについてお話ししてきましたね。今回は、骨粗しょう症の治療の中心となる「お薬」について、分かりやすく説明します。
「薬ってたくさん種類があって、どれがいいのか分からない…」と感じる方もいるかもしれません。でも大丈夫!患者さん一人ひとりの骨の状態やライフスタイルに合わせて、当院では最適なお薬を選んで治療を進めています。一緒に、骨を強くするためのお薬のひみつを探っていきましょう!
私たちの体の中の骨は、毎日「古い骨を壊す(骨吸収)」ことと「新しい骨を作る(骨形成)」という作業を繰り返しています。骨粗しょう症は、このバランスが崩れて骨がもろくなる病気なので、治療薬も主にこのバランスを整える働きを持っています。大きく分けると、次の2つのタイプがあります。
このタイプのお薬は、骨が壊れるスピードをゆるやかにすることで、骨が減らないようにする働きがあります。例えるなら、骨を溶かす働きを持つ細胞(破骨細胞)の活動を抑え、骨の密度がこれ以上減らないように守ってくれるイメージです。
代表的なお薬としては、以下のようなものがあります。
このタイプのお薬は、その名の通り、骨を作る細胞(骨芽細胞)を元気にして、骨の量を増やすことを期待できる薬です。骨がもろくなってしまった骨を、根本から丈夫に作り直すようなイメージです。
代表的なお薬としては、以下のようなものがあります。
だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、患者さん一人ひとりの骨の状態や年齢、そしてこれまでの骨折歴などを詳しく診察し、最適な治療薬を選んでいます。
骨粗しょう症の治療では、「逐次療法(ちくじりょうほう)」という考え方も重要です。これは、ある薬で治療を行った後、別の薬に切り替えて治療を続けることです。
例えば、骨を作る薬(テリパラチド製剤など)で骨密度をしっかり増やした後、骨が減らないようにする薬(デノスマブやビスホスホネート製剤など)に切り替えて、その効果を維持していくことがあります。デノスマブ使用後の逐次療法は特に重要で、中断による骨密度の急激な低下を防ぐために、ビスホスホネート製剤などへの移行が推奨されています。
お薬による治療は、すぐに効果が出るわけではありません。継続して治療を行うことで、少しずつ骨が強くなり、骨折しにくい体へと変わっていきます。自己判断で薬をやめてしまうと、せっかく治療で得られた効果が失われてしまうこともあるので、必ず医師の指示に従い、治療を続けることが大切です。
骨粗しょう症の治療は、お薬だけに頼るものではありません。骨を強くするためには、次の2つの要素も非常に大切です。
だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、お薬による治療と合わせて、患者さんに最適な運動や栄養のアドバイスも行っています。
今回は、骨粗しょう症の治療に用いられる様々なお薬の種類や、それぞれの働き、そして当院での薬剤選択の考え方について解説しました。骨粗しょう症の治療は、患者さんの状態に合わせて最適な薬を選び、継続して行うことが非常に重要です。
もし、骨の健康や治療についてご不安な点があれば、いつでもだて整形外科リハビリテーションクリニックにご相談ください。
次回は、「みんなで目指す『寝たきりゼロ』!だて整形外科の骨を守るチーム」というテーマで、当院がどのようにチーム医療で患者さんの骨の健康をサポートしているのかを詳しくご紹介します。どうぞお楽しみに!
日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力して