だて整形外科リハビリテーションクリニック

骨を強くするお薬のひみつ!だて整形外科の治療の選択肢

2025/07/15

本記事は、帝人ファーマ社内講演会(2025.6.18)にて講師として登壇した内容をもとに、高校生向けにわかりやすく再構成した全4回シリーズの第3回です。医療やからだについて学ぶきっかけとして、ぜひご活用ください。

はじめに:骨粗しょう症の治療、お薬がカギを握る!

こんにちは!下関の整形外科、「だて整形外科リハビリテーションクリニック」です。これまでのブログで、骨粗しょう症とはどんな病気か、そしてどんな人が骨折しやすいかについてお話ししてきましたね。今回は、骨粗しょう症の治療の中心となる「お薬」について、分かりやすく説明します。

「薬ってたくさん種類があって、どれがいいのか分からない…」と感じる方もいるかもしれません。でも大丈夫!患者さん一人ひとりの骨の状態やライフスタイルに合わせて、当院では最適なお薬を選んで治療を進めています。一緒に、骨を強くするためのお薬のひみつを探っていきましょう!

骨粗しょう症治療薬の2つのタイプ

私たちの体の中の骨は、毎日「古い骨を壊す(骨吸収)」ことと「新しい骨を作る(骨形成)」という作業を繰り返しています。骨粗しょう症は、このバランスが崩れて骨がもろくなる病気なので、治療薬も主にこのバランスを整える働きを持っています。大きく分けると、次の2つのタイプがあります。

1. 骨が壊れるのを防ぐ薬(骨吸収抑制薬)

このタイプのお薬は、骨が壊れるスピードをゆるやかにすることで、骨が減らないようにする働きがあります。例えるなら、骨を溶かす働きを持つ細胞(破骨細胞)の活動を抑え、骨の密度がこれ以上減らないように守ってくれるイメージです。

代表的なお薬としては、以下のようなものがあります。

  • ビスホスホネート製剤(BP製剤)
    • 飲み薬(経口薬)と注射薬があります。
    • 骨に直接作用して、骨の破壊を抑制します。
    • 当院では最も多く使用されている治療薬の一つですが、継続率が低いという課題もあります。
    • 骨折リスクが比較的低い患者さんに使用されます。
  • サーム製剤(SERM製剤)
    • 乳がんのリスクを抑えながら、女性ホルモンを骨に特化して効果を発揮する内服薬です。
    • 閉経後の女性に対して使用します。
  • デノスマブ(DMAB)
    • 半年に1回の注射で効果が持続する薬です。
    • 骨を壊す細胞の働きを強力に抑えます。
    • 治療を中断すると骨密度が急速に低下する「リバウンド現象(オーバーシュート)」を起こす可能性があるため、症例を限定して使用しています。

2. 骨を新しく作るのを助ける薬(骨形成促進薬)

このタイプのお薬は、その名の通り、骨を作る細胞(骨芽細胞)を元気にして、骨の量を増やすことを期待できる薬です。骨がもろくなってしまった骨を、根本から丈夫に作り直すようなイメージです。

代表的なお薬としては、以下のようなものがあります。

  • テリパラチド製剤
    • 注射薬で、毎日自己注射するものと、週に2回通院して注射するものがあります。
    • 骨を作る働きを強力に促進します。骨折後の痛みに対しても除痛効果が期待されています。
    • 骨折リスクの高い患者さんに推奨されます。
    • 当院のデータでは、テリパラチド製剤の継続率は61.6%でした。離脱理由としては、副作用、転院、費用負担などが挙げられます。
  • アバロパラチド製剤(オスタバロ)
    • テリパラチド製剤と同様に注射薬です。
    • テリパラチドよりも大腿骨の骨密度上昇効果が高いとされています。
    • 副作用が少なく、高カルシウム血症のリスクが低いという特徴もあります。
    • 当院では、大腿骨の骨密度増加が喫緊の課題であるため、アバロパラチド製剤の導入を積極的に検討し、推進する必要があると考えています。
  • ロモソズマブ
    • 新しいタイプの骨形成促進薬で、骨形成を促進すると同時に骨吸収を抑制する「デュアル作用」を持っています。
    • 骨折抑制効果が非常に高いとされています。
    • 特に重症骨粗しょう症患者への早期投入が推奨されています。

骨の状態や年齢、骨折歴で最適な薬を選ぶ

だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、患者さん一人ひとりの骨の状態や年齢、そしてこれまでの骨折歴などを詳しく診察し、最適な治療薬を選んでいます。

  • 骨折リスクが低い患者さん:
    • ビスホスホネート製剤やデノスマブが推奨されます。
    • 当院ではSERM製剤を最も多く使用しています。
  • 骨折リスクが高い患者さん(重症骨粗しょう症):
    •  日本骨代謝学会及び日本骨粗鬆症学会の診断基準を参考にすると、
    • ①骨密度が-2.5SD以下で1個以上の脆弱性骨折を有する
    • ②骨密度がYAM値60%未満
    • ③既存椎体骨折の数が2個以上
    • ④既存椎体骨折の半定量評価法結果がグレード3
    • 上記に該当する患者が重症骨粗鬆症に当てはまるとされています。
    • 当院のデータでは、重症骨粗しょう症の患者さんが4076例中1008例(24.7%)いることが示されています。
    • このような患者さんには、骨を作る力を強くするテリパラチドやアバロパラチド、ロモソズマブといったオステオアナボリック製剤が第一選択肢として考慮されます。
    • 特に脊椎、股関節、骨盤の骨折後は、骨吸収抑制剤よりも骨同化剤の方が骨折リスクをより早く、大きく減少させることが示唆されています。

逐次療法って何?治療を続けることの大切さ

骨粗しょう症の治療では、「逐次療法(ちくじりょうほう)」という考え方も重要です。これは、ある薬で治療を行った後、別の薬に切り替えて治療を続けることです。

例えば、骨を作る薬(テリパラチド製剤など)で骨密度をしっかり増やした後、骨が減らないようにする薬(デノスマブやビスホスホネート製剤など)に切り替えて、その効果を維持していくことがあります。デノスマブ使用後の逐次療法は特に重要で、中断による骨密度の急激な低下を防ぐために、ビスホスホネート製剤などへの移行が推奨されています。

お薬による治療は、すぐに効果が出るわけではありません。継続して治療を行うことで、少しずつ骨が強くなり、骨折しにくい体へと変わっていきます。自己判断で薬をやめてしまうと、せっかく治療で得られた効果が失われてしまうこともあるので、必ず医師の指示に従い、治療を続けることが大切です。

お薬だけじゃない!運動と栄養も忘れずに

骨粗しょう症の治療は、お薬だけに頼るものではありません。骨を強くするためには、次の2つの要素も非常に大切です。

  • 運動: ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、骨に適切な負荷をかける運動は、骨を作る細胞の働きを活性化させ、骨密度を高める効果が期待できます。また、バランス能力を向上させ、転倒予防にもつながります。
  • 栄養: カルシウムやビタミンD、ビタミンKなど、骨の健康に必要な栄養素をしっかり摂ることが重要です。食事からバランス良く摂取することを心がけましょう。

だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、お薬による治療と合わせて、患者さんに最適な運動や栄養のアドバイスも行っています。

まとめと次回予告

今回は、骨粗しょう症の治療に用いられる様々なお薬の種類や、それぞれの働き、そして当院での薬剤選択の考え方について解説しました。骨粗しょう症の治療は、患者さんの状態に合わせて最適な薬を選び、継続して行うことが非常に重要です。

もし、骨の健康や治療についてご不安な点があれば、いつでもだて整形外科リハビリテーションクリニックにご相談ください。

次回は、「みんなで目指す『寝たきりゼロ』!だて整形外科の骨を守るチーム」というテーマで、当院がどのようにチーム医療で患者さんの骨の健康をサポートしているのかを詳しくご紹介します。どうぞお楽しみに!

監修者情報

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力して