膝の痛み、あきらめていませんか?|PRP療法が効果的な理由

2024/09/22

こんにちは、だて整形外科リハビリテーションクリニックの伊達亮です。
今回は、変形性膝関節症(OA)の治療において、話題の多血小板血漿(PRP)療法がどのように効果を発揮するかについて、最新の研究結果をご紹介します。今回ご紹介する文献は、「Scientific Reports」誌(インパクトファクター4.0)に掲載されたものです。

PRP療法とは?

PRP療法は、患者さん自身の血液から高濃度の血小板を抽出し、患部に注入することで組織修復や再生を促す治療法です。血小板には、成長因子や炎症を抑える物質が豊富に含まれており、これを利用することで膝関節の痛みや炎症を和らげ、軟骨の修復をサポートします。

研究の目的と方法

この研究は、PRP療法の最適な投与量を明らかにし、その効果をヒアルロン酸(HA)注射と比較することを目的としています。研究では、変形性膝関節症の患者150名を対象に、以下の2つのグループに分け、1年間にわたって効果を追跡しました。

1.PRP注射グループ(75名)・・・1回あたり血小板10億個を含むPRPを注射。
2.ヒアルロン酸(HA)注射グループ(75名)・・・4mlのヒアルロン酸を注射。

結果

研究の結果、PRP注射グループは以下の点で顕著な改善を示しました。

WOMACスコア(膝関節機能の指標):PRP注射グループは、治療1年後でもヒアルロン酸グループよりも有意に優れたスコアを示しました。
IKDCスコア(膝の健康状態を評価する指標):PRPグループでは、治療1か月後に有意な改善が見られ、その効果は1年間持続しました。
6分間無痛歩行距離:PRP注射を受けた患者さんは、歩行距離が顕著に増加し、その改善効果は1年間持続しました。


さらに、PRP注射グループでは、炎症の指標であるIL-6やTNF-αのレベルが有意に減少しており、PRPが炎症を抑え、軟骨を保護する効果があることが示唆されました。

臨床的意義

本研究は、PRPの適切な投与量(8ml中に血小板10億個)が、変形性膝関節症の中等度患者さんにおいて、症状を長期間にわたって改善することを示しています。これにより、膝関節の機能改善や痛みの軽減が期待できます。一方、進行した変形性膝関節症の患者さんでは、効果が限定的である可能性があるため、症状に応じた治療の選択が重要です。

当院でのPRP治療

当院では、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できるよう、最新の医療知見に基づいてPRP療法を行っています。PRP治療にご興味がある方や詳しい情報をお求めの方は、ぜひ一度当院までご相談ください。

今後も、皆様の健康をサポートするために、最新の医療情報をお届けしていきたいと思います。

執筆者情報

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。