【専門医が解説】クーリーフの仕組み:なぜ高周波(ラジオ波)で膝の痛みが取れるのか?

2025/11/24

「注射や薬では治まらない膝の痛みが、高周波(ラジオ波)で本当に軽減するの?」「体に熱を加えるなんて、安全なの?」

変形性膝関節症による慢性的な痛みに苦しむ方にとって、クーリーフ(Coolief)治療は、手術を避けながら痛みをコントロールできる革新的な治療法です。しかし、その治療の核となる「ラジオ波」のメカニズムについて、疑問や不安を感じるのは当然のことでしょう。

本記事では、日本整形外科学会専門医であり、痛みの治療とリハビリテーションの専門家でもある当院の院長が、クーリーフ治療の仕組みを科学的根拠に基づき、分かりやすく徹底的に解説します。このメカニズムの理解こそが、クーリーフがなぜ長期間にわたる高い疼痛軽減効果安全性を発揮できるのかを知る鍵となります。

1. クーリーフの基本原理:痛みの伝達経路を精密に遮断する

クーリーフ治療が他の治療法と根本的に異なるのは、膝の痛みの伝達経路を直接ターゲットにする点です。

1-1. 痛みの信号をキャッチする「感覚神経(知覚神経)」

変形性膝関節症の痛みは、関節軟骨の摩耗や炎症によって関節包や靭帯が刺激されることで発生します。この刺激をキャッチし、「痛い!」という信号を電気信号として脳に伝えるのが、末梢の感覚神経(知覚神経)です。

クーリーフ治療の目的は、この信号伝達を担う主要な3本の膝神経(上内側膝神経、下内側膝神経、上外側膝神経など)の働きを抑えることです。

1-2. 高周波(ラジオ波)エネルギーによる「熱凝固」のメカニズム

ターゲットとなる感覚神経に対し、特殊な構造を持つ針(プローブ)の先端から高周波の電気エネルギー(ラジオ波)を流します。ラジオ波は、体内にある細胞や組織を振動させ、その摩擦熱によって神経細胞の一部を熱凝固(焼灼)させます。

この熱凝固によって、神経細胞の構造が変化し、電気信号(痛みの信号)を伝える機能が一時的かつ長期的に停止します。これにより、痛みは続いているにもかかわらず、脳が「痛い」と感じることはなくなります。

2. クーリーフの核心:冷却ラジオ波(Cooled RF)技術の優位性

クーリーフシステムは、単に熱を加えるだけでなく、独自の冷却技術を組み合わせることで、従来のラジオ波治療の限界を打ち破り、その効果と安全性を飛躍的に高めています。

2-1. 冷却がもたらす長期効果の秘密:広範囲・均一な熱凝固

通常のラジオ波治療では、針の先端の非常に狭い範囲しか焼灼できませんでしたが、クーリーフでは針の先端部を内部の冷却液で冷やし続けます。

  1. 熱の均一な拡散: 冷却により、針の周囲の温度が安定し、発生した熱エネルギーが組織内で広範囲に、そして均一に拡散します。これにより、痛みの神経をより大きく、より確実な範囲で焼灼することが可能になりました。
  2. 長期持続の根拠: 広範囲で均一な熱凝固こそが、神経の機能停止期間を延ばし、約1年~2年という長期にわたる疼痛軽減効果を実現する科学的根拠となっています。

2-2. 運動神経を絶対に守る「二重の安全対策」

感覚神経と、膝の曲げ伸ばしを司る運動神経は、近くを走行していることが多いため、誤って運動神経を焼灼すると、筋肉の麻痺などの重篤な合併症につながる可能性があります。クーリーフ治療では、このリスクを最小限に抑えるため、以下の安全対策を徹底します。

  1. 超音波(エコー)ガイド下での精密誘導: 当院では、日本整形外科学会専門医・日本整形外科超音波学会所属・クーリーフ認定医師の資格を持つ院長が、超音波(エコー)を用いて神経、血管、骨などの構造をリアルタイムで確認しながら、針の侵入経路と最終位置を決定します。
  2. 電流刺激による神経の確認: 針がターゲットに到達する直前、ごく微弱な電流を流すことで、筋肉が反応するかどうかを確認します。筋肉が反応した場合(運動神経に近すぎる場合)、針の位置を微調整し、運動機能に影響を与えないことを確認してからラジオ波の焼灼を行います。

この高精度な技術と厳格な安全確認体制により、痛みのみをブロックし、膝の機能(動き)は維持することが可能です。

3. 効果の持続と神経の再生サイクル:リハビリとの連携

クーリーフによる長期的な疼痛軽減は、神経の機能停止期間を利用して、患者さんが活動的な生活を取り戻すための時間を作り出すことにあります。

3-1. 長期効果のメカニズムと再治療の可能性

焼灼された神経組織は時間をかけてゆっくりと再生・修復されます。この再生するまでの期間(約1年~2年)が、患者さんが痛みから解放される期間となります。

  • 再治療の考え方: 神経が再生し、再び痛みの信号が強くなってきた場合でも、クーリーフは完全に神経を破壊する治療ではないため、一定期間(通常1年以上)の間隔を空けることで2回目の治療を受けることが可能です。これにより、手術をせずに膝の痛みを長期的に管理していくことができます。

3-2. 痛みが軽減した後の「リハビリテーション」とヒアルロン酸注射やPRP治療が長期予後を決定づける

クーリーフ治療が成功しても、膝の変形や筋力低下が治るわけではありません。痛みがなくなった状態を最大限に活かすことが、長期的な予後には不可欠です。

  • 関節の保護:痛みが軽減したからといって、関節軟骨自体が直ったわけではありません。ヒアルロン酸注射やPRP注射を併用して、関節軟骨の保護と後述するリハビリを組み合わせて、進行を防ぐことが重要です。
  • 悪循環の断ち切り: 痛みが減ることで、「動かしたくない」という心理的なバリアが取り払われます。
  • 機能回復の加速: 痛みを気にせず、積極的に筋力トレーニングや運動療法に取り組めるようになり、弱っていた膝周囲の筋肉が回復します。
  • 専門医の視点: 当院の院長は日本リハビリテーション医学会専門医でもあり、治療後のリハビリテーション計画を立てる専門知識を有しています。痛みが軽減した後の運動療法、筋力強化、正しい歩行指導までをトータルでサポートし、膝の機能回復と転倒・寝たきり予防に尽力します。

4. 最後に:専門技術と知識に基づいた安心の治療を

クーリーフ治療は、高性能な機器に加え、痛みの神経解剖を熟知し、超音波エコーを駆使できる医師の技術力に依存します。

だて整形外科リハビリテーションクリニックでは、整形外科専門医としての豊富な知識と、リハビリテーション医学専門医としての機能回復への知見を融合させ、安全かつ効果的なクーリーフ治療を提供しています。

「なぜ痛みが取れるのか」という仕組みを理解することで、不安が解消され、治療への確信が持てるはずです。膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。

記事監修

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)

福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医日本骨粗鬆症学会専門医日本リハビリテーション医学会専門医など多岐にわたる専門医資格を保持。地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。

【出典・参考文献】

本記事は、公的機関の発表、および国内外の信頼できる臨床報告に基づき作成されています。

  1. 医療機器に関する情報
    • アバノス・メディカル・ジャパン株式会社:Coolief疼痛管理用高周波システムに関する医療従事者向け添付文書及び製品情報
      • (冷却ラジオ波(Cooled RF)技術、作用メカニズム、運動神経回避の安全性に関する情報)
  2. 主要な臨床データ・有効性に関する情報
    • Corey, A. S., et al.:Prospective, Randomized, Multi-Center Study Evaluating the Efficacy and Safety of Cooled Radiofrequency Denervation for the Treatment of Chronic Knee Pain. Pain Pract. 2017 Jul;17(6):687-698.
      • (クーリーフ治療における疼痛軽減の臨床的有効性、持続期間、安全性に関する科学的根拠)
  3. 専門医学会情報
    • 日本整形外科学会:変形性膝関節症診療ガイドライン
    • 日本リハビリテーション医学会:疼痛と神経ブロックに関する見解
      • (末梢神経ラジオ波焼灼療法の医学的根拠と位置づけ、およびリハビリテーションの必要性に関する情報)