だて整形外科リハビリテーションクリニック

リウマチ rheumatoid-arthritis

関節リウマチについてご紹介いたします。

関節リウマチについて

どんな病気ですか?

関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、放っておくと関節が変形してしまう病気です。

図:関節リウマチの関節の変化
中外製薬HPより許可を得て転載
関節が炎症を起こす軟骨が破壊される関節が変形する
軟骨の破壊を抑えることが特に重要です

原因はなんですか?

免疫異常が原因といわれています。免疫は本来、外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して破壊し、それらを排除する働きを担っています。免疫に異常が生じると、誤って自分自身の関節を攻撃してしまいます。それにより炎症が起こり、関節の腫れや痛みとなって現れてきます。

免疫異常により関節が炎症を起こし、関節破壊に至る

初期症状は?(ひとつでもあったら受診を考えましょう)

  • ボタンのつけ外しが難しい
  • ドアノブが回しにくい
  • 指の第2・3関節が腫れたり、痛む指が握り込みにくい
  • 朝のこわばり など
図:指の第2・3関節が腫れたり・痛む指が握り込みにくい
リウマチかも?と少しでも感じたら早めに受診しましょう!
(空振りを恐れずに)

何科を受診したらよいの?

治療経験が多く、最新の治療動向にも詳しい【日本リウマチ学会リウマチ専門医】が勤務している施設を受診しましょう。

【日本リウマチ学会専門医とは】

  1. 整形外科専門医などの各科専門医資格を持つ
  2. リウマチ専門施設で3年以上の治療経験を有す

上記2項目を満たす医師が日本リウマチ学会が主催する試験をクリアすることで得られる専門医資格です。
当クリニック院長は日本リウマチ学会認定専門医です。
(下関市内には常勤勤務のリウマチ専門医は8名だけです)

受診や治療は日本リウマチ学会専門医で行いましょう!

診断について

症状と画像検査(レントゲンやエコー検査)、採血を中心に総合的に判断します。

症状

  • 朝のこわばり
    朝起きてしばらくは関節が思うように動かせないことをいいます。朝のこわばりが強いと、洗顔・はみがき・朝食の準備などが思うようにできないことがあります。
  • 関節症状
    関節リウマチでは特に指(第2・3関節)や手関節から発症することが多いです。

採血

  • リウマトイド因子(リウマチ因子)
    リウマチ因子は関節リウマチの方の約80%の方が陽性となります。
    早期リウマチでは陰性になることもあります。
  • 抗CCP抗体
    抗CCP抗体はより早期から陽性になることが多く、当クリニックでは症状からリウマチが疑われる場合は、抗CCP抗体を検査します。
    抗CCP抗体が陽性だと、関節リウマチである可能性が高くなります。
  • CRP・ESR・血沈(赤血球沈降速度)
    関節の炎症を表します。当クリニックでは、治療効果判定の指標の一つにしています。

画像検査

  • エコー
    関節痛や腫れを認める関節にエコー検査を行います。
    炎症が起こっているところに血流が集まり、炎症が起こっていることが分かります。
図:炎症が起こっているところに血流が集まり、炎症が起こっていることが分かります
  • レントゲン
    治療開始時に胸部レントゲンや疼痛部位のレントゲンを撮影することがあります。
リウマチの診断は【腫れや関節痛などの症状】【血液検査】【画像検査】から総合的に判断する

症状について

症状はどのように進行しますか?

  • 最初の2年関節破壊が急速に進行します
  • 早期発見・早期治療がとても重要です
図:関節破壊の急速に進行
中外製薬より許可を得て転載
関節破壊が起こる前に、治療を開始しましょう!
最初の2年が重要です!!

治療について

治療の目的

  • 治療の目的は、早期に寛解状態に移行し、関節破壊を防ぐことです。
  • 寛解とは、リウマチの症状が落ち着いている(コントロールできている)状態をいいます。
  • そのためには、
    1. 関節の痛みや腫れをとること(臨床的寛解)
    2. 関節破壊の進行を抑えること(構造的寛解)
    3. 生活機能(QOL)を改善すること(機能的寛解)
    の3つが重要です。

患者さんそれぞれに合った治療薬を選択し、まず【臨床的寛解】を目指します。
【臨床的寛解】がえられたら関節破壊の原因の炎症が抑えられているということなので、【構造的寛解】が得られやすくなり、【機能的寛解】につながります。

図:寛解について
【臨床的寛解】に到達することで【構造的寛解】【機能的寛解】につながります。

治療開始にあたって

治療は免疫を抑える薬を使用するため、患者さんご自身の過去から現在にかけてかかったおそれがある感染症を中心に詳しくチェックする必要があります。

検査の種類

採血 目的
白血球
(特にリンパ球)
免疫力が正常域にあるか確認
肝機能・腎機能 薬による副作用が起きた場合、最初の状態と比較するため
T-SPOT検査
(結核検査)
免疫を抑える薬を使用すると、結核・真菌感染・肝炎(特にB型肝炎)が再燃することがあるため
血中βDグルカン
(真菌[かび]検査)
B型肝炎・C型肝炎
画像検査  
胸部Xp 治療開始時と治療開始後も定期的に行い、肺炎や結核のチェックを行います
胸部CT検査 治療開始前に必ず行い、呼吸器症状などが悪化した場合、初回分CTと比較できるようにしています

治療

薬物療法を中心に行い、適宜リハビリを追加していきます。
重要なのは関節破壊の抑制効果です。

種類 関節破壊抑制 副作用
消炎鎮痛薬(NSAIDs) × 胃潰瘍など
ステロイド × 血糖値上昇、骨粗鬆症など多岐にわたる
抗リウマチ薬(DMARDs) 感染症、間質性肺炎など
生物学的製剤 DMARDsと同様だがより注意が必要
Jak阻害薬 感染症、帯状疱疹など
  1. 消炎鎮痛薬(NSAIDs:エヌセイズ)
    関節の腫れや痛みを和らげる働きがありますが、関節破壊を抑制する効果は低いです。胃潰瘍や十二指腸潰瘍に十分に注意する必要があります。
  2. ステロイド
    炎症を抑えますが、関節の破壊を抑えることはできません。治療開始早期に限定的に使用することはありますが、抗リウマチ薬や生物学的製剤の効果が出てきたタイミングで早期に中止します。ステロイドには感染症、糖尿病や骨粗鬆症などを引き起こす恐れがあるため、連用する場合には十分な注意が必要です。
  3. 抗リウマチ薬(DMARDs:ディーマーズ)
    関節リウマチの原因である免疫の暴走を抑えて、病気の進行を抑える働きがあります。効果が出るまでに1~2ヶ月かかります。効果が不十分な場合ときは、他の抗リウマチ薬を併用したり生物学的製剤に切り替えたり併用することもあります。

    当クリニックで使用する主なDMARDs

    こちらの表はスワイプできます
    種類 特徴 副作用
    メトトレキサート
    商品名:リウマトレックス、
    メトレート
    • リウマチ患者さんに最初に使用する薬
    • 効果の発現が比較的早い
    • リウマチ治療のアンカー製剤とよばれており、
      第1選択薬です。
    • 体のだるさ
    • 汎血球減少(白血球などが減少)
    • 間質性肺炎
    • 肝機能・腎機能障害など
    サラゾスルファピリジン
    商品名:アザルフィジン
    • リウマトレックスが使用できない方や
      年齢の高い方に使用します
    • 汎血球減少
    • 肝機能・腎機能障害
    • 間質性肺炎
    イグラチモド
    商品名:コルベット、
    ケアラム
    • 効果発現が遅い
    • サラゾスルファピリジンとの比較をしても
      効果に差がない
    • 他剤と比して安価
    • 汎血球減少
    • 肝機能障害など
    • 間質性肺炎
    • 消化性潰瘍
  4. 生物学的製剤
    【特徴】
    炎症を引き起こすサイトカイン(TNFαやIL-6など)の働きを妨げ、関節破壊を強力に抑えます。注射(点滴または皮下注射)で投与します。当クリニックでは、皮下注射を推奨しています。自宅で注射でき、通院回数を減らせますし、ご高齢の方や手が変形して細かい動作が行いにくい方でも比較的簡単に使用できるように工夫されています。
    【副作用】
    免疫反応を強力に抑えるため、肺炎や結核・B型肝炎などの感染症が起こることがあります。 こちらの表はスワイプできます
    製品名 アクテムラ オレンシア シンポニー エンブレル エタネルセプトBS
    作用機序 IL-6阻害薬 T細胞阻害薬 TNF阻害薬
    投与方法 皮下注
    薬価
    (1錠、1本あたり)
    39,291 28,233 121,527 28,233 17,246
    1回量(本) 1 1 1 1 1
    投与間隔 2週間に1回 1週間に1回 4週間に1回 1週間に1回
    薬価
    (28日)
    薬価(28日) 78,582 112,932 121,527 125,008 68,984
    1割負担 7,858 11,293 12,153 12,501 6,898
    3割負担 23,575 33,880 36,458 37,502 20,695
    特徴(私見含む)
    • 炎症を強力に
      抑える
    • 薬価が安い
    • 感染症のリスクが
      少し低い
    • 抗CCP抗体が
      高値の方に
      有効性が高い
    • 4週間に1回の
      投与で済む
      (1-2本使用)
    • 妊娠希望の方に
      第1選択の薬剤
    • エンブレルの
      ジェネリック
    (薬価は2018年4月時点)
    ほかに診察料や検査料、処方せん料などが
    かかる場合があります

    生物学的製剤は効果がある反面、非常に高額です。
    高額療養費制度を使用することで、自己負担額を軽減することができます。

    詳しくはこちら

最後に・・・

当クリニックでは、抗リウマチ薬や生物学的製剤を中心に治療を行っています。
治療効果を【3ヶ月おき】に判定し、【3つの寛解】がえられていない場合は、薬剤を追加・変更しています。

【抗リウマチ薬・生物学的製剤を使用し、3つの寛解を目指す】
【肺炎などの感染症を中心に副作用に十分注意する】
【3つの寛解】の到達を【3ヶ月】おきに見直して適宜治療方針を見直す

妊娠とリウマチについて

リウマチになってしまい、妊娠・出産をあきらめてしまう方が多いのですが、寛解状態であれば、妊娠・出産することは可能です。妊活中、妊娠中、授乳中に使用できる薬剤は以前より多くなり、より寛解状態に導きやすくなっています。
自己判断せずに一度主治医に相談してみてください。

詳しくはこちら
図:妊娠とリウマチについて