【鼠径部痛の原因と診断】鼠径ヘルニア?股関節?種類と見分け方を整形外科医が解説

2024/02/22

足の付け根が痛いとき、「何科を受診すればいいのかわからない」「ヘルニアかもしれない」「股関節の病気かもしれない」と不安になる方も多いのではないでしょうか。鼠径部(そけいぶ:太ももの付け根)の痛みは、スポーツ時や日常生活の動作で生じることが多く、原因も様々です。

この記事では、鼠径部痛の主な原因と、症状から判断できる受診先の目安を整形外科専門医が詳しく解説します。また、セルフチェック方法や、すぐに受診が必要な危険なサインについてもお伝えします。

足の付け根(鼠径部)の痛みは「整形外科で相談してよいケース」が多い

鼠径部(足の付け根)の痛みの多くは、動作時痛や運動時痛を伴う整形外科領域の疾患です。股関節の病気、筋肉や腱の損傷、スポーツ障害などが主な原因となります。

ただし、一部の症状(明らかなしこり、安静時痛、発熱を伴う場合など)は、外科や泌尿器科、婦人科など他科での診察が必要になることもあります。

判断に迷う場合は、まず整形外科で評価を受け、必要に応じて適切な専門科を紹介してもらうのが安心です。

足の付け根の痛み(鼠径部)の痛みは何科を受診すべき?

症状から見る受診先の目安

- 動かすと痛い → 整形外科

- しこりがある → 外科(消化器外科/ヘルニア外来)

- 排尿時に痛みがある → 泌尿器科

- 月経周期と関連がある → 婦人科

- 発熱・強い腹痛を伴う → 救急・内科

以下で詳しく解説します。

整形外科で診ることが多い症状

以下の症状がある場合は、整形外科での診察が適しています:

- 動かすと痛い(歩く、立ち上がる、股関節を動かす動作で痛みが増す)

- スポーツや運動後に悪化する

- 股関節の可動域が制限されている(足が上げにくい、開きにくい)

- 動作の始めに痛みが出る(立ち上がり時、歩き始めなど)

- 押すと痛い部位が特定できる(筋肉や腱の付着部など)

他科受診を検討すべき症状

以下の症状がある場合は、整形外科以外の診療科も検討が必要です:

- 明らかなしこりがある(鼠径ヘルニアの可能性が高まる → 外科(消化器外科/ヘルニア外来))

- 安静時も痛む(整形外科以外も含めた鑑別が必要。状況により整形外科/内科・泌尿器科・婦人科)

- 発熱を伴う(感染症の可能性が高まる → 内科・外科)

- 腹部症状を伴う(内臓疾患の可能性が高まる → 内科・外科)

- 排尿時に痛みがある(泌尿器疾患の可能性が高まる → 泌尿器科)

- 月経周期と関連がある(婦人科疾患の可能性が高まる → 婦人科)

受診先判断のフローチャート

【セルフチェック】あなたの鼠径部痛の特徴は?

チェック項目

以下の項目を確認してみてください:

1. 押すと痛い?

  - 特定の部位を押すと痛みが増す → 筋肉・腱の損傷の可能性

  - 押しても痛みに変化がない → 深部の痛み、内臓由来の可能性

2. 動かすと痛い?

  - 股関節を動かすと痛みが増す → 股関節疾患の可能性

  - 動かしても痛みに変化がない → 安静時痛、他科疾患の可能性

3. しこりはある?

  - しこりがある → 鼠径ヘルニア、リンパ節腫脹の可能性

  - しこりがない → 整形外科的疾患の可能性が高い

4. 痛みは広がる?

  - 痛みが広がる → 神経症状、内臓疾患の可能性

  - 痛みが局所的 → 整形外科的疾患の可能性が高い

5. いつ痛む?

  - 動作時・運動時 → 整形外科的疾患の可能性が高い  - 安静時も痛む → 他科疾患の可能性

チェック結果から考えられる主な原因

整形外科的な原因が考えられる場合

- 股関節由来の痛み(変形性股関節症、股関節唇損傷など)

- グロインペイン症候群(スポーツ障害)

- 筋肉・腱・靭帯の障害(腸腰筋炎、内転筋損傷など)

他科受診を検討すべき場合

- 鼠径ヘルニア(外科(消化器外科/ヘルニア外来))

- リンパ節腫脹(内科・外科)

- 泌尿器疾患(泌尿器科)

- 婦人科疾患(婦人科)

鼠径部が痛む主な原因

整形外科的な原因

1. 股関節由来の痛み

- 変形性股関節症

 - 股関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる

 - 立ち上がり時、歩行時に痛みが増す

 - 中高年に多い

- 股関節唇損傷

 - 股関節の関節唇(軟骨の縁)が損傷する

 - スポーツ選手に多い

 - 股関節を動かすと痛む

- 股関節炎

 - 股関節に炎症が生じる

 - 感染性、リウマチ性など様々な原因がある

2. グロインペイン症候群

- スポーツ選手に多い鼠径部周辺の痛み

- 複数の原因が複合的に作用することが多い

- 内転筋、腸腰筋、股関節周囲の筋肉の障害が関連

▶当院のスポーツ整形・リハビリについて詳しくはこちら

3. 筋肉・腱・靭帯の障害

- 腸腰筋炎

 - 股関節を曲げる筋肉(腸腰筋)の炎症

 - 股関節を曲げる動作で痛む

- 内転筋損傷

 - 太もも内側の筋肉(内転筋)の損傷

 - 足を閉じる動作で痛む

- 大腿直筋の損傷

 - 太もも前面の筋肉の損傷

 - 膝を伸ばす動作で痛む

整形外科以外の原因

1. 鼠径ヘルニア(脱腸)

- 腹壁の筋肉や組織が弱くなり、腸などの内臓が皮膚の下まで飛び出す

- 鼠径部にしこりや痛み・腫れが出る

- 中高年男性に多い

- 外科での診察が必要

2. 鼠径リンパ節腫脹

- 鼠径部のリンパ節が感染などで腫れる

- 患部が熱をもち、発赤や腫れ、押すと痛い

- 感染症や下半身のけがが原因になることもある

- 内科・外科での診察が必要

3. 泌尿器疾患

- 尿路感染症、尿路結石など

- 排尿時に痛みがある場合が多い

- 泌尿器科での診察が必要

4. 婦人科疾患

- 子宮内膜症、卵巣嚢腫など

- 月経周期と関連がある場合が多い

- 婦人科での診察が必要

男女・年代別にみる鼠径部痛の特徴

男性に多い原因

- 鼠径ヘルニア

 - 中高年男性に特に多い

 - しこりを伴うことが多い

- グロインペイン症候群

 - スポーツ選手(特にサッカー、ラグビーなど)に多い

 - 若年〜中年男性に多い

- 股関節の病気

 - 変形性股関節症は男性にも発症するが、女性の方が多い

女性に多い原因

- 変形性股関節症

 - 女性に多い(特に先天性股関節脱臼の既往がある場合)

 - 中高年女性に多い

- 婦人科疾患

 - 子宮内膜症、卵巣嚢腫など

 - 月経周期と関連がある場合が多い

- 股関節唇損傷

 - スポーツ選手に多いが、女性にも発症する

年代別の傾向

- 若年層(10代〜30代)

 - スポーツ障害(グロインペイン症候群、筋肉損傷)

 - 股関節唇損傷

 - 鼠径ヘルニア(若年でも発症することがある)

- 中年層(40代〜50代)

 - 変形性股関節症の初期

 - 鼠径ヘルニア

 - 筋肉・腱の損傷(加齢による柔軟性低下)

- 高齢層(60代〜)

 - 変形性股関節症

 - 鼠径ヘルニア - 転倒による外傷

整形外科で行う検査と治療

診察・評価の流れ

1. 問診

- いつから痛みが出たか

- どんな動作で痛むか(立ち上がり、歩行、スポーツなど)

- 痛みの性質(ズキズキ、重い、動作で痛むなど)

- 痛みのきっかけ(スポーツ、転倒、特にきっかけがないなど)

- 既往症や関連する症状(発熱、腫れ、歩行障害など)

2. 身体診察(動作・可動域評価)

- 鼠径部の視診・触診(腫れや圧痛、しこりがないか)

- 股関節の可動域評価(曲げる、伸ばす、開く、閉じる動作)

- 歩行の観察- 股関節周囲組織、リンパ節の状態確認

3. 画像検査

必要に応じて以下の検査を実施します:

- 超音波(エコー)検査【当院で実施】

 - 筋肉の損傷や、ヘルニアの有無をその場で確認できます

 - レントゲンには写らない「筋肉・腱の損傷」や「ヘルニアの初期症状」を、リアルタイムで評価できます

 - 被曝の心配もありません

 - 「ただの筋肉痛だと思っていたら肉離れだった」「ヘルニアの疑いがある」といった所見を、診察所見と合わせて判断します

- レントゲン(X線)【当院で実施】

 - 骨の状態、変形性股関節症の評価

- MRI・CT

 - 精密検査が必要な場合は、提携する高度医療機関を迅速にご紹介します

4. その他の検査

- 血液検査

 - 感染症や炎症反応の有無、他の臓器疾患との鑑別

- 尿検査

 - 泌尿器疾患の鑑別

治療の中心は保存療法(リハビリ)

鼠径部痛の治療は、多くの場合保存療法(手術をしない治療)が中心となります。

1. 運動療法(リハビリテーション

- 股関節周囲の筋肉のストレッチ

 - 腸腰筋、内転筋、大腿直筋などの柔軟性向上

- 筋力トレーニング

 - 股関節周囲の筋力強化

 - 体幹の安定化

- 動作指導

 - 痛みを悪化させる動作の修正 - 正しい動作パターンの習得

2. 生活動作の調整

- 痛みを悪化させる動作の回避

- 適切な休息と運動のバランス- 体重管理(肥満がある場合)

3. 薬物療法

- 痛み止め(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)

- 湿布薬

4. 注射療法

- 痛みが強い場合、局所麻酔薬やステロイドの注射を行うことがあります

5. 手術が必要になるケース

以下の場合、手術を検討することがあります:

- 保存療法で改善しない場合

- 変形性股関節症が進行している場合

- 股関節唇損傷が重度の場合

- 鼠径ヘルニアの場合(外科での手術)

治るまでの目安

鼠径部痛の回復期間は、原因や重症度、個人差によって大きく異なります。以下は一般的な目安です(あくまで参考としてご覧ください)。

筋肉・腱の軽い損傷

- 回復期間:数日〜数週間

- 適切な休息とストレッチ、生活動作の調整で改善することが多い

- 早期の対応が重要

グロインペイン症候群

- 回復期間:数週間〜数か月

- リハビリテーションが重要

- スポーツ復帰までには、症状の完全消失と再発予防のための身体づくりが必要

▶当院のスポーツ整形・リハビリについて詳しくはこちら

変形性股関節症

- 回復期間:進行度によって大きく異なる

- 早期であれば保存療法(リハビリ、生活動作の調整)で症状の改善・進行抑制が期待できる

- 進行している場合は、手術を検討することもある

鼠径ヘルニア

- 回復期間:手術が必要になることが多い

- 外科での手術後、通常は数週間で日常生活に戻れる

- 嵌頓(かんとん:腸が戻らなくなる状態)の場合は緊急手術が必要

回復を早めるポイント

- 早期受診:症状が出たら早めに医療機関を受診する

- 適切な治療:自己判断で放置せず、専門医の診察を受ける

- リハビリの継続:特にグロインペイン症候群や変形性股関節症では、リハビリの継続が重要

- 生活動作の見直し:痛みを悪化させる動作を避け、正しい動作パターンを習得する

※回復期間には個人差があります。上記はあくまで目安です。実際の回復期間は、症状の程度、年齢、全身状態、治療への反応などによって異なります。

当院の治療の特徴

だて整形外科では、鼠径部痛に対して以下の診療を行っています

1. 「エコー検査」によるリアルタイム診断

当院では、レントゲンには写らない「筋肉・腱の損傷」や「ヘルニアが疑われる所見」を、超音波(エコー)検査を用いてその場で評価します(※必要に応じて追加検査や専門医療機関での検査をご案内します)。「ただの筋肉痛だと思っていたら肉離れだった」「ヘルニアの疑いがある」といった所見を、診察所見と合わせて判断します。被曝の心配もなく、診察室ですぐに結果がわかるのがエコー検査の強みです。

2. 股関節の動きと筋力バランスまで確認し、原因を「股関節/筋肉/その他」で整理して説明します

- 日本整形外科学会専門医による詳細な診察

- 股関節の可動域、動作パターン、筋力バランスの評価

- 原因を整理し、患者様にわかりやすく説明します

3. リハビリテーション

単に安静にするだけでなく、「なぜ痛くなったのか(フォームや柔軟性の問題)」を分析し、競技復帰に向けたリハビリメニューを提案します。日本リハビリテーション医学会専門医による個別に合わせた運動療法プログラムで、痛みの改善だけでなく、再発予防のための身体づくりまでサポートします

4. 必要時の専門医紹介

- 鼠径ヘルニアなど、他科での診察が必要な場合は適切な専門科を紹介

- 精密検査(MRI・CT)が必要な場合は、提携する高度医療機関を迅速にご紹介

- 患者様の症状に最適な診療を提供し、必要に応じて適切な専門科をご紹介します

だて整形外科では、無理な訴求はせず、患者様の症状に最適な診療を提供し、必要に応じて適切な専門科をご紹介します。信頼できる医療機関として、患者様の健康をサポートします。

すぐに受診が必要な「危険なサイン」

以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください

緊急性が高い症状

- 急激な痛み

 - 突然の強い痛みが生じた場合

- しこりが戻らない

 - 鼠径ヘルニアの嵌頓(かんとん:腸が戻らなくなる状態)の可能性

 - 緊急手術が必要になることがある

- 発熱を伴う

 - 感染症の可能性

 - リンパ節炎、化膿性関節炎など

- 強い腹痛を伴う

 - 内臓疾患の可能性

 - 腸閉塞などの緊急疾患の可能性

- 歩けない、足が動かせない

 - 重度の外傷、神経損傷の可能性

早めの受診を検討すべき症状

- 痛みが徐々に悪化している

- 安静時も痛む

- 日常生活に支障が出ている- しこりが徐々に大きくなっている

よくある質問(FAQ)

Q. 足の付け根が痛いけど、しこりがない場合は?

A. しこりがない場合、整形外科的な原因(股関節疾患、筋肉・腱の障害など)の可能性が高くなります。特に、動かすと痛む、スポーツや運動後に悪化するなどの症状がある場合は、整形外科での診察をおすすめします。

Q. 歩くと痛いのは股関節が原因?

A. 歩行時に痛みが出る場合、股関節由来の痛み(変形性股関節症、股関節唇損傷など)の可能性があります。ただし、筋肉・腱の障害でも歩行時に痛みが出ることがあります。整形外科で股関節の可動域や動作パターンを評価することで、原因を特定できます。

Q. スポーツ後だけ痛むのは放置していい?

A. スポーツ後だけ痛む場合でも、放置せずに早めの受診をおすすめします。グロインペイン症候群や筋肉・腱の軽い損傷の可能性があり、早期の対応で回復が早くなります。また、適切なリハビリや動作指導により、再発を予防できます。

Q. 受診の目安は何日続いたら?

A. 明確な基準はありませんが、以下の場合は早めの受診をおすすめします:

- 痛みが1週間以上続いている

- 痛みが徐々に悪化している

- 日常生活に支障が出ている

- しこりがある、発熱を伴うなどの症状がある

迷った場合は、まず整形外科で相談することをおすすめします。

Q. 鼠径部痛は自然に治りますか?

A. 軽い筋肉・腱の損傷であれば、適切な休息と生活動作の調整で自然に改善することもあります。ただし、股関節疾患やグロインペイン症候群などは、適切な治療やリハビリが必要になることが多いです。自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

まとめ|迷ったらまず整形外科で相談を

鼠径部(足の付け根)の痛みは、多くの場合整形外科で診ることができる症状です。特に、動作時痛や運動時痛を伴う場合は、股関節や筋肉・腱の障害が原因であることが多いです。

ただし、明らかなしこりがある、安静時も痛む、発熱を伴うなどの症状がある場合は、外科(消化器外科/ヘルニア外来)や内科、泌尿器科、婦人科など他科での診察が必要になることもあります。

判断に迷う場合は、まず整形外科で評価を受け、必要に応じて適切な専門科を紹介してもらうのが安心です。

だて整形外科では、鼠径部痛に対して専門的な評価とリハビリテーションを提供しています。痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

執筆者情報

日本整形外科学会専門医 伊達 亮(だて整形外科リハビリテーションクリニック 院長)
福岡大学医学部医学科を卒業後、山口大学医学部付属病院整形外科・麻酔科での経験を経て現職に至る。日本整形外科学会専門医 、日本骨粗鬆症学会専門医 、日本リハビリテーション医学会専門医 など多岐にわたる専門医資格を保持し、地域の「寝たきりゼロ」をミッションに掲げ、骨粗しょう症の早期発見・早期治療、および運動器リハビリによる転倒予防に尽力している。